The Atomic Cafe LIVE&TALK
「原発は腐った行政と共にやってくる」「対話の場を作ることで、自分たちを取り戻す」「世界情勢と核」
© Photo by Mari Onoda

■2025年7月25日金曜日:トークテーマ「原発と災害」
TALK:落合誓子(ルポライター)
MC:津田大介/ジョー横溝
LIVE:佐々木亮介(a flood of circle)

「原発は腐った行政と共にやってくる」

初日の7月25日金曜日のトークは石川県珠洲市の元市議会議員でルポライターの落合誓子さんを招いて行われた。MCはジャーナリストの津田大介さんとジョー横溝さんだ。

珠洲市は2024年元旦に起こった能登半島地震によって大きな被害を被った。震災後、珠洲市の街並みは大きく変化。子供の頃から育った落合さんでさえ道を間違えるほどだという。市役所調べで人口は1割減。しかしそれは住民票を移した人数。住民票をそのままにして街を離れた人も多くいるという。落合さんの体感では半数近くの人がいなくなったのではないかと思えるほど、人口が減少しているという。

珠洲市に原発建設のための事前調査の話が浮上したのは、チェルノブイリ原発事故が起こったわずか3年後の1989年のことだった。もしも珠洲市の住民が事前調査を受け入れていたら、大量の原発マネーが投下され、住民の意思とは関係なく、原発は出来ていただろう。今回の地震で珠洲市のみならず日本全体に大きな被害をもたらしていたに違いない。原発の計画を阻止したのは、漁業や商店街や住民をはじめ、同時多発的に起こった反対運動だった。

住民運動が成功した秘訣は2つ。1つは、珠洲市が警察署移転問題や不当な公共住宅建設問題を抱えていたこと。どちらも地権者や行政に近い者による利益誘導だということを市民は理解していた。行政を信用していなかった市民は原発誘致にも疑いの目を向けていた。2つめは反対運動のリーダーを作らなかったこと。これが一番大事なことだと落合さんは言う。というのも、リーダーを作ると、推進派はそこを集中的に攻撃する。金銭の授受やスキャンダルを仕掛け、リーダーを失脚させることで運動を骨抜きにするのだ。珠洲の場合は、反対運動を統括する者がいたわけではない。様々な職業の団体や市民や住民が同時多発的に反対運動を展開した。推進派が誰かを叩いたところで、反対運動がなくなることがなかった。

もし珠洲原発が建設されていたら未曾有の被害を日本にもたらしていただろう。能登半島地震のあと「あのとき原発を止めてくれてありがとう」という多くの感謝の声が市民や住民に届いたそうだ。トークのなかで落合さんが放った「原発は腐った行政と共にやってくる」というひと言が非常に印象的だった。

■2025年7月26日土曜日:トークテーマ「民主主義と自治」
TALK:岸本聡子(杉並区区長
MC:津田大介/ジョー横溝
LIVE:春ねむり

「対話の場を作ることで、自分たちを取り戻す」

2日目のトークゲストは杉並区区長の岸本聡子さん。岸本さんは「国際青年環境NGO A SEED JAPAN」に参加。天神山で開催された第1回目のフジロックや東京開催となった第2回目のフジロックでゴミゼロナビゲーションのボランティアをやっていた。当時は環境問題のことがなかなか伝わらずに苦労したという。今夏は地域によっては40度を超える暑さに加え、線状降水帯の発生など、自然が猛威をふるっている。環境問題が深刻な問題として、誰の身にも降り掛かっている。この日もトークの途中から突然の土砂降りに見舞われた。

岸本さんは地域から民主主義を修復していこうという気持ちで区長をやってきたという。そんななか、突然、排外主義が台頭する。杉並区でもSNSのヘイトスピーチが、路上にもあらわれているという。杉並区の人口の2〜3%が外国人。彼らは脅威を感じ、多くの人が深く傷ついている。岸本さんのパートナーも外国人。岸本さんのお子さんもそういう環境で育ってきたので、外国人が感じている恐さを身にしみてよくわかるという。「本当は排外主義的な状況を政治が正していかなければならない」と岸本さんは言う。にもかかわらず、日本では、参政党をはじめ、政治がそういう状況を作り出してしまっている。

たしかに同じような現象は全世界で起こっている。ヨーロッパでは9.11(2000年9月11日にアメリカで起こった大規模なテロ事件)をきっかけにイスラムに対する潜在的なストレスや摩擦が爆発。極右政党がじわじわと台頭。地方議会や国政において、第二党、第三党になっていった。しかしそうなるには25年という時間がかかった。ところが日本の場合、「日本人ファースト」という排斥的な考え方が、こともあろうか選挙を通して顕在化。参政党、自民党、公明党、国民民主党、維新が排外主義的な政策を掲げ、民衆を扇動することで、わずか2ヶ月で「日本人ファースト」や「外国人ヘイト」が一気に広まった。

そういうときにこそ、岸本さんは区民との対話と対話の場を作ることが重要だと話す。そのひとつの試みがジェンダー平等の審議会。区民も参加して「ジェンダー平等とはなんだろう?」ということを丁寧に話し合っている。そこでは「日本ではジェンダー平等は全然駄目だ」というような一般論で語るのではなく、「自分」を主語に無意識の思い込みや無意識の偏見を外してみようという内容のワークショップをやっているそうだ。岸本さんは「他人と自分は違って当たり前。納得はしなくても理解するために何ができることがあるはずだ」と話す。

政治についても同じことだ。政治と区民の信頼が底抜けの状態のなかで、いきなり政治の信頼を勝ち取っていくことはできない。そこでもやはり対話が大事な要素になってくる。岸本さんは「議会で対立が起こるのはやむを得ない。地域社会に出ると、自民党を無条件で応援している人たちもいる。そこに対話の接点がないのかと言ったら全然そんなことはない」と話す。共通言語を持たない人たちと、もう少し意識的に、共通項を見つけていくような、関心を見つけていくような、一緒に作っていくようなことをやっていかなければならない、と。

例えば、住民が安心できる仲間や子供たちの居場所やいい地域を作っていきたいというところでは、政治的な立場は関係なく協力できるはずだ。津田さんは「地域主権の話はイデオロギーフリー。地域のことをどう地域で決めるのか。それは党を超えてやれること」と話す。そこで重要なのは、知らない人と安心して話せる装置=対話の場を作ること。岸本さんは、そういう場を自治体主導で作っているという。それが民主主義の足下からの修正にもつながる、と話す。

■2025年7月27日日曜日:トークテーマ「世界情勢と核」
TALK:青木理(ジャーナリスト)・川口真由美
MC:津田大介/ジョー横溝
LIVE:川口真由美+MONKY

3日目はジャーナリストの青木理さんとライブにも登場する川口真由美さんを迎えて行われた。やはりここでも話題に上がったのは参政党の躍進。参院選の比例区では自民党と国民民主党に続いて3番目の得票数を得た。その参政党が「核武装は安上がりだ」と発言。被爆国の政党とは思えない無神経な発言かつ相変わらずの中身のない紋切り型の発言に辟易するばかりだが、青木さんに言わせると、この発言に至った背景にはアメリカとイスラエルによるイランの核施設の爆撃があるという

核拡散防止条約(NPT)は、核兵器保有国を米国、ロシア、英国、フランス、中国の5ヵ国に限定。それ以外の国による核兵器開発や保有を禁止した条約だ。核兵器保有国に対しては、核軍縮に向けた交渉を義務付けている。戦後の核秩序はNPTによって成り立ってきた。ところが、アメリカのトランプ大統領はNPTに入っていない核保有国イスラエルと一緒になって、NPTに入って核兵器の開発を疑われながらも核兵器を完成させていないイランに空爆をしたのだ。「こんなことをしたら、核兵器を持ったほうが得だよね。核兵器を持たないとやられちゃうよね、と北朝鮮のような弱い国はそう思うに違いない」と青木さんは言う。「国連安全委員会常任理事国のアメリカの大統領がNPT非加盟のイスラエルと一緒になって、核ドミノがおきかねないことをやっている今、世界の核秩序が崩壊しつつある」と。まったくそのとおりだと思う。

現在、NPTの5ヵ国以外に、イスラエル、北朝鮮、インド、パキスタンなどが核を保有している。北朝鮮で核武装ができるわけだから、たしかに「安上がり」だ。しかし、それを推し進めた北朝鮮は世界中の国々から圧倒的な経済制裁を受けている。青木さんは「もし日本が核武装をすると言い出したら、アメリカが許さないだろうし、その瞬間に日米同盟は崩壊する」と警告する。「諸外国からの反発も必至で、日本に対する経済的なダメージは『核武装は安上がり』ですむようなレベルではない」と。日本が核武装することで、韓国や台湾に核ドミノが起きかねない。紋切り型の言葉の先にある危うさを考えないと、取り返しのつかないことになる。

そういう意味では、「核武装は安上がり」も「原発がないと電力不足になる」も同じレベル。今、関西電力が美浜原発に新たな原発を新設する話が出てきている。ジョーさんは「最高裁で東京電力や国に事故の責任がないとなった途端に新設や原発GX(化石燃料中心の経済社会を、再生可能エネルギーや原子力などのエネルギーへと転換させる取り組み)の話が出てきた」と指摘。「まるでGXを通すためにお墨付きを与える判決のようだ」と言う。それを受けて津田さんは原発の新設について3つの問題をあげた。

1つは新しい原発の安全基準が未確定なこと。

2つめはコストの問題 。
3.11以前、原発は5千億円で建設されていた。ところが、昨今の建設コスト上昇により、1兆円を超えるという。直近だとフランスが1基を新設して2兆円、イギリスが2基を作って6兆円かかっているそうだ。津田さんは「1兆円の建設費は電気代の上乗せで賄うというが、ただでさえ高騰している電気代に加え、電力自由化でどこまで上乗せできるかもわからない」と言う。

3つめは核のゴミ問題。
原発の使用済燃料(核のゴミ)から利用可能なウランやプルトニウムを取り出し、再処理して燃料として再利用。再処理後に出る高レベル放射性廃棄物をガラスで固めて最終処分をするというのが核燃サイクルだ。しかしこの再処理事業はほぼ破綻状態。今、使用済燃料(核のゴミ)は原発の敷地内のプールに保管されているが、限界を迎えている。これ以上、使用済燃料(核のゴミ)を出さないためには原発を止めるしかない。1兆円かけて美浜原発の敷地に新たに原発を作ったとしても使用済燃料(核のゴミ)を保管する場所がないので稼働できない可能性も大きい。使用済燃料(核のゴミ)のリスクに加え、イランやウクライナの核施設への攻撃を考えても、原発は今や安全保障上のリスクにもなりうる。ジョーさんは「動いている原発をすみやかに廃炉にしていくべきだ」と訴える。原発でエネルギーを生み出すというのは今や夢物語。むしろ廃炉に注力し、廃炉の技術を輸出したほうがよほど儲かると思う。

3.11後に盛り上がった脱原発の勢いも、今や大衆のなかではしぼんでしまっている。原発のリスクは3.11の頃に比べて、より増しているのにも関わらず、だ。短絡的な言葉が跋扈し、真実を語ることにバイアスがかかり、本当のことが届かなくなっている世の中を象徴しているようだ。そんな世の中の流れのなかで、川口さんは反戦・平和の歌をうたいつづけている。ところがライブハウスから「そういう歌は2割程度にして、あとは違う歌をうたってほしい」と言われたりするそうだ。もはや何に対して忖度しているのすらわからない。おそらくその発言をした当人もわかっていないと思う。川口さんはそういう状況のなかでも「変わらない自分の生き方をメロディにのせて歌っていきたい」と言う。「沖縄の辺野古で座り込んでいる人たちが今日もいるのだな、と想像することをやめないで歌い続けたい」と。

フジロックの2週間後、ジョン・レノンとオノ・ヨーコがニューヨークに渡って政治的な活動を行っていた頃の楽曲をまとめたボックスセット『パワー・トゥ・ザ・ピープル』がリリースされることが発表された。トランプやイスラエルやプーチンや右傾化する世界情勢に抵抗するようなリリースにも思える。このアルバムはSNSで大衆を丸め込もうとしている勢力・風潮に対してのカウンターでもある。住民の力で原発を止めた珠洲の人たち、自治のレベルから人との丁寧な対話によって民主主義を取り戻そうとしている岸本さん、「音楽を通して生き方を一緒に考えよう」と呼びかけた川口さん。まさに「パワー・トゥ・ザ・ピープル」そのものだ。

7.25 (FRI)

7.26 (SAT)

7.27 (SUN)