The Atomic Cafe LIVE&TALK~Spin-out 幻のFUJI ROCK FES.'20編~
“気候クライシスとコロナ後の世界”
© Photo by Mari Onoda

 毎年、FUJI ROCK FES.のジプシー・アヴァロンおよびNGOビレッジにて原発を始めとしたあらゆる社会問題をテーマにステージを企画してきたThe Atomic Cafe。FUJI ROCK FES.‘20では「表現の自由」や「気候クライシス」をテーマにした企画を行う予定だったが、コロナの影響でフェスは延期に。それにともない3日間の企画を1日に凝縮した「The Atomic Cafe LIVE&TALK~Spin-out 幻のFUJI ROCK FES.‘20編~ “気候クライシスとコロナ後の世界”」をリモートライブ配信で開催することになった。MCは津田大介。ライブゲストに巻上公一、大島花子、細美武士が、トークゲストに経済思想家の斎藤幸平氏(リモート出演)、巻上公一、細美武士が出演。

 フジロックNGOビレッジ村長・アトミックカフェ代表の大久保青志とNPO アイプレッジ代表の羽仁カンタの挨拶につづき巻上公一が登場。口琴を使ったインストゥルメンタル「ホムス・ホムス」、尺八を使った「ユウトリウス」、アジア中央部に伝わる独特の歌唱法の曲「ホーメイ・アクロバット」を演奏。途中、昨年暮れに出版された詩集『至高の妄想』からポエトリー・リーディングを披露した。

 つづくトークライブでは巻上公一、細美武士、津田大介が登壇。前半はコロナの影響でレコーディングやライブが延期になった現状を報告。後半は「表現の不自由展」から浮き彫りになった「国が表現を選ぶことを隠さなくなった」ことへの危機感が語られた。一方で検察庁法改正案に対してSNSでおおくの人が反対の声をあげた事例から仮想空間の文字やハッシュタグを政治が気にしはじめたのではないかという見解も。

 2組目のライブゲストは大島花子。伴奏は彼女のアルバムにサウンド・プロデュースで参加しているギタリストの笹子重治がつとめた。父・坂本九の「上を向いて歩こう」、広島への原爆投下を通し反戦への思いが綴られた美空ひばりの「一本の鉛筆」、「イマジン」の忌野清志郎バージョンを披露。最後に「見上げてごらん夜の星を」を歌った。「8月は父親の命日、原爆、終戦の月であり、同時に自分の命の大切さを思う月」と紹介。命の尊さやかけがえのない日常の輝きをテーマに歌を歌いつづけている大島花子ならではの選曲だった。来年はぜひフジロックのステージで歌ってもらいたい。

 つづいてのトークライブはリモート出演の斎藤幸平と津田大介が濃密な対談を展開。「気候クライシスとコロナ後の世界」というテーマで「コロナが終息したあと、V字回復で元に戻ったとしてもそれはすでに持続可能な社会ではない」「コロナはグローバル資本主義に対する警告でもある」「コロナ後の世界は新しい社会へ転換する提議にならなければならない」「GDP=豊かさと信じ込んでいるが、そうではない価値観を確定しなければならない」など様々な提言がなされた。

 最後に登場したのは細美武士。森山良子の「涙そうそう」、MONOEYESの「Two Little Fishes」、「My Instant Song」、ELLEGARDENの「金星」をアコースティックギターで演奏。最後にTOSHI-LOWが飛び入りしてBRAHMANの「今夜」を披露。彼はほとんど毎年のようにアトミックカフェのステージに登場。さまざまなパフォーマンスと共にトークライブで市民目線の意見を述べくれている。また東北ライブハウス大作戦を中心にさまざまな支援活動も行っている。来年は東日本大震災と原発事故から10年目。Atomic Cafeもそれを軸にトークテーマを考える予定だ。2021年は苗場でお会いしましょう。

 今回、配信を見てくださった皆さん、出演者の皆さん、スタッフの皆さん、渋谷ロフト9の皆さんにあらためて御礼申し上げます。ありがとうございました。