ATOMIC CAFE @ FRF '14 © Photo by Mari Onoda

  • 7月26日 (土) ATOMIC CAFE TALK 津田大介・大友良英

  • 7月27日 (日) ATOMIC CAFE TALK 津田大介・田原総一朗

ビデオ公開は出演アーチストの都合により2日・3日のみとさせて頂きます。

7.25 (FRI) 26 (SAT) 27 (SUN)

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アトミックカフェ@フジロック2014を終えて

 今年も7月最後の金土日(24・25・26日)にフジロック・フェスティバルが苗場スキー場で開催された。アトミックカフェは今年もNGOビレッジで展示を、そしてGYPSY AVALONステージで3時間ほどの脱原発のイベントを開催。3日間にわたり、数々のゲストを迎えて、トークとライブを行った。全日を通してのMC(司会進行)は津田大介さん。24日のトークは加藤登紀子さん、TOSHI-LOWさん、後藤正文さん。ライブが加藤登紀子さん、エセタイマーズの2組。25日が大友良英さんのトークと大友良英スペシャル・ビッグバンドのライブ。26日は田原総一朗さんのトークと、TOSHI-LOWさんとゲストのYAMAZAKI(toe)さんのライブといった具合だ。NGOビレッジでは「NO NUKES! NO WAR!」をテーマにTシャツや展示をプロデュースした。

まず驚いたのがライブだけではなくトークも連日満員だったこと。場内に入りきれない人がGYPSY AVALONのまわりに人垣を作っていた。26日は雨だったので動員が減るかなとも思ったが、津田大介さんと田原総一朗さんのトークには大勢が詰めかけた。これはフジロック・ファンの間で、アトミックカフェが浸透してきたということもあるだろうが、集団的自衛権や原発再稼働に見られる政治の暴走に対する危機感の表れなのかもしれない。24日のアトミックカフェ・トークでも加藤登紀子さんから「権力を持っている人が何をやってもいいという世の中が怖い」という発言があったように、原発も戦争も勝手にコントロールしようとしている安倍政権とその取り巻きに対する強い反発心が動員にも影響したような気がする。また集まった皆さんが真剣に耳を傾けている様子も、確実に去年とは切実さが違った。NGOビレッジのアトミックカフェ・ブースで無料配布していた脱原発のリーフレットとNO NUKESのタグも1日めでなくなってしまった。フジロック全体の動員数が去年以下だったことを考えれば、関心度は高まったと考えた方がいいだろう。

初日24日のトークで印象に残ったのがTOSHI-LOWさんの「一人でもやる。思ったら一人でもやる。社会を巻き込めるかわからないけど、社会は自分。自分が変われば社会は変わる」という発言だった。例えば、原発や戦争の問題を突き詰めて考えていくと、それに関わっている企業や銀行の思惑、政治献金、アメリカとの関わりなど、どんどん半径が広くなり、手に負えなくなってしまい、最後には陰謀論に到達し、無力感だけが支配する。TOSHI-LOWさんがいうように、一番身近な社会は自分であり、自分の意識が変わることが、社会が変わる第一歩ととらえれば、あらゆる問題は半径2メートル以内に収まる。考えてみれば、最初から集団とか社会はその半径2メートルの集積にすぎないのだ。その発想の転換はアクションを起こす上でとても重要だと思った。それは25日の津田大介さんと大友良英さんの「現代ではジョン・レノンも忌野清志郎も出てこない。自分たち一人ひとりがジョン・レノンや忌野清志郎にならなくてはならない」という発言にもつながっていく。そうなるには自分が社会なのだという自覚は必要になってくる。

26日のトークで田原総一朗さんは具体的にどうやって脱原発を発信していくべきかということに言及した。これはとてもためになる話だった。田原さんは「これからは感情論でなく理詰めで脱原発をいっていかないと駄目」と指摘した。例えば、原発推進派が推進のためのロードマップを持っていないところを冷静に突いていくことが大事だという。

考えてみれば、推進派は発電コストやCO2のことばかりをいうが、それも根拠のある具体的な数字に基づいた論ではない。コストに関していえば、さきごろ、発電コストに関しても原発は火力を上回ったという報告があったし、いうまでもなく事故を起こしたときの「見えないコスト」は天井知らずだ。CO2の問題にしても、もしも現在の火力発電をすべて原発に置き換えるとすれば、全世界で1500基もの原発を新設しなければならない。それを作るには森林を切り開き、海岸線を埋め立て新たな土地を買収し、さらに核廃棄物の貯蔵施設を1500基分、準備しなければならない。それらの環境負荷を考えた場合、原発を推進することがCO2の削減につながるとは思えない。しかもそれらの原発は寿命がたったの40年であり、施設そのものが核廃棄物になることを考えると、即時停止して火力でつなぎながら自然エネルギーへシフトするというのが環境負荷の一番少ない方法だ。もちろんCO2の問題が原発に置き換えることで解決できるわけがない。人の生活の仕方や企業の工場のあり方、熱帯雨林の保護など、もっと根本的な人類の営みの仕方から変えていかないと解決しない問題だ。枯渇していくウランをどこに求めるのかといったビジョンも提示されていなければ、原発運用の構造を支えているのは壊れた高速増殖炉「もんじゅ」だ。田原さんは「もんじゅ」は文科省の管轄、原発推進をいっているのは経産省で、足並みが揃うはずはない、という。では高速増殖炉の技術を外国に求めた場合どうなるのか? 技術を持っているのは中国とロシアであって、田原さんは「ロシアや中国製の増殖炉なんて信頼できるわけはない」という。それは田原さんの主観としても、原発を推進するということは中国やロシアに対して貸しを作るということにもなりかねない。それは外交上、現実的なのかどうかとなると、ますます原発推進は難しくなる。

そうやって理詰めで行くと、たしかに原発推進は自ずと破綻する。それを象徴していたのが、再稼働したい関電が再稼働できないのは規制委員会に詳細なデータを提出しないからだという話だった。詳細なデータを出さなければ再稼働はできないが、詳細なデータを出せば再稼働の認可はおりないというジレンマ。それが原発の現実であり、そのどちらにも行っても未来はないという現実を一般市民が共有すれば、脱原発はもっと大きなうねりにはなるのだろう。推進派のいっていることの方が、なんとなく科学的に思えるような現状を切り崩すことが大事だと思った。

田原さんの「理詰め論」は25日の大友良英さんの話とも通じた。大友さんは3.11後、福島でフェスを開催した。線量が高いところでフェスとは何事か、という非難が次から次に寄せられたという。しかし大友さんには違う思惑があった。当時、線量をちゃんと測ろうという動きがまったくなかった。フェスをやるということは事前に線量の詳細を公開し、来る来ないの判断をお客さんに委ねるということだ。ここで初めて「線量を測る」という動きが出た。「なんとなく危ない」という感覚的な話から「線量はこういう数値」という具体的な話に、そこで初めて移行したのだ。薄ぼんやりとした感情論から具体的な数値や根拠を求めていけば、原発推進の道筋は自ずと閉ざされていく。

しかし田原さんは「脱原発を唱えている者も再生可能エネルギーへのロードマップをもっていない」と指摘する。原発をやめようにも決定的な対案がないのだ。どうやって自然エネルギーへのシフトを政官財が共有し、ロードマップを作っていくのか。そこが今後の大きな課題になってくる。しかしそれはすでに破綻している原発推進のロードマップを作るよりも現実的だ。実際にドイツはそのロードマップを作り、経済的な成功も勝ち得ている。要するにロードマップとはスゴロクのようなものだ。3コマ進んだところで発送電分離の問題が立ちはだかり、それをクリアしたらどのステップへいくのか。フリダシからゴールまでをひとつの図に落とし込めばいいわけだ。そのスゴロクづくりを早急に行わなければならない。それはアトミックカフェ発でもソーラーブドウカン発でもエセタイマーズ発でも政治発でも経産省発でもソフトバンク発でもかまわない。そのスゴロクを多くの議論のもとに修正しながら、脱原発社会へ進んでいくという努力が必要になってくる。脱原発に向けたアクションのサポート、自然エネルギーの啓蒙イベントの後押しなどと同時に次のアクションに進まなければならない時期がやってきたように思う。今年のアトミックカフェ・トークを聞いていて、そういうことを考えていた。

(テキスト=森内淳)